導入事例
済生会長崎病院様 動画サーバー更新に伴う新機能「看護記録システム」による業務改善の実現
今回、動画ネットワークシステム更新にあたり、これまでの使用経験の中でのサーバーの安定性と操作性、そして新機能の充実やカスタマイズ性と対応の迅速性等を理由として、以前と同じフォトロン メディカル イメージングズ社製を選択した。そのシステムの中で業務改善に大きく寄与した機能の一つである「Kada-Report5看護記録」を紹介したい。
As we replaced the Cardiology PACS, we selected same “Kada-Solution” of the DICOM Cardiology Network System which is made by Photron Medical Imaging Inc., for reason of use experience in stability and operability of the prior server, enhancement of new functions, customizability and correspondence.
Especially, I would like to introduce the“ Kada-Report 5 nursing record” one of the functions that greatly contributed to business improvement in that system.
社会福祉法人恩賜財団済生会支部済生会長崎病院放射線室 河野 順様に執筆いただきました。
RadFan2018年8月号からの転載文
導入製品
済生会長崎病院について
当院は1938年(昭和13年)に設立され、本年、平成30年をもって創立80周年を迎える。
この間、生活に困窮している人々への支援に力を入れるとともに、安全で安心な最新医療を提供する事で地域の皆様の信頼を得てきた。
当院の理念は「済生の精神をもって心のこもった医療を実践する」事であり、変遷する医療情勢の中にあっても創立の精神を継承していく事を謳っている(図1、表1)。急性期医療を担う地域中核病院として、当院の使命は多岐にわたっている。
当院は基本方針の一つに「最高品質を求めて変革していく病院」である事を掲げている。今日の医療の品質は「構造」「過程」「成果」で評価されており、当院の構造の大きな特徴は“205床の全病床が個室である事”であり(図2)、その長所を最大限に活かして医療の品質を追求し、患者さんの満足度を限りなく高める努力を継続している。
表1 済生会長崎病院概要
- 名称
- 社会福祉法人恩賜財団済生会支部 済生会長崎病院
- 所在地
- 長崎県長崎市片淵2丁目5-1
- 全診療
(全19科) - 救急センター 総合診療科 呼吸器内科 循環器内科 消化器内科 腎臓内科 内分泌糖尿病内科 小児科 皮膚科 外科 脳神経外科 脳卒中診療科 脳血管内治療科 整形外科 産婦人科 泌尿器科 睡眠医療センター放射線科 麻酔科
動画ネットワークシステムの選考基準
当院では循環器動画ネットワークシステムを2006年に導入した。
この度、導入後11年経過していた動画ネットワークシステムについて、
・動画サーバーが堅牢で、安定している。
・検索機能が簡便かつ高速である。
・電子カルテ端末でのWeb閲覧が実用的である。
・カスタマイズ性が高く、スピーディである。
・新機能が充実している。
・導入実績が多く、信頼性が高い。
事を主な選考基準として、同メーカのフォトロン メディカル イメージング株式会社製にて機器更新するに至った。
Kada-Report5看護記録
そのシステムの中で、導入した事により業務改善に大きく寄与した機能の一つである「Kada-Report5 看護記録」について今回ご紹介したい。
まず、当院に導入更新した動画サーバーシステムの概要を説明する。
1. システム構成
・動画サーバー
・Webサーバー
・ストレージ装置(実効容量:5TB)
・バックアップ装置(RDX装置)
・動画読影、カテレポート作成用専用クライアント(5式)
専用クライアントの設置場所
アンギオ操作室
多目的室
医局 ×2
ME室
看護記録PC(電子カルテ端末への相乗り・レポート×1)
・連携しているシステム
ソフトウェアサービス電子カルテシステム 連携呼び出し(画像・レポート)
・接続しているモダリティ
島津製作所社 心臓アンギオ装置:1機
フィリップス社 バイプレーンアンギオDSA装置:1機
日本光電社 ポリグラフ装置:1機
ボストンサイエンティフィックジャパン社 IVUS装置:1機
アボット社 OCT・FFR装置:1機
2. フォトロン社製 動画ネットワークシステムの特長
(1)DICOM動画サーバー Kada-Serveの特長
Kada-Serveは、アンギオ装置やポリグラフ、IVUS、OCT等のDICOMデータを受信し、管理するDICOM動画サーバーである。
一般的にはそれぞれ設置が必要なWebサーバー、マルチゲートウェイサーバー、レポートサーバーを一つのサーバーで担う事が可能であり、1台4役のコストパフォーマンスが実現可能である。
また「Kada-Serve」にはネットワーク上の端末でKada-Viewと同等の操作が可能な「Kada-View Web」が搭載されており、Kada-Serveに保存されるWindows Media Video(WMV)データでHIS/RIS/PACSや電子カルテ等の院内システムとシームレスな連携を実現し、高速配信が難しい古いネットワーク環境に於いても負担をかける事なく院内全端末のどこからでも動画像を参照・活用する事ができる。
(2)DICOM動画ビューワ Kada-View5の特長
Kada-View5は、アンギオ装置やIVUS、超音波診断装置、CT、MRI等のDICOMデータを快適に表示する為のDICOMビューワである。直観的な操作性、高速な検索機能を有しており誰でも簡単に操作でき、快適な環境が実現された。
院内の電子カルテ端末等でWeb上にて閲覧する際も全く同じ画面構成になっている為、スタッフの習熟度も早く運用する事ができた。
加えて、プレゼンテーション用の画像データ作成を得意とし、非常に簡便な処理で編集、加工した後様々なファイル形式(BMP、JPEG、TIFF、AVI、MPEG4、WMV等)に瞬時に出力する事ができ、医師の学会発表用資料の作成業務時間を大幅に低減する事が可能である。
(3)循環器レポートシステムKada-Reportの特長
Kada-Reportは、最新のFileMakerをベースとしたカテレポートシステムである。
カスタマイズも非常に柔軟で、循環器医師がこだわる細部の様々なデザイン、フォーム、運用案を忠実に、またスピーディに実現する事ができた。
作成したレポート結果は、院内の電子カルテシステム上で閲覧する事ができる。
また最新のJPC(I NCD)レジストリへの一括転記機能等も有しており、医師の業務効率の改善に期待できる。
Kada-Report5看護記録機能
そして、今回主にご紹介したいシステムがKada-Report5の「看護記録機能」である。
1. 看護記録機能の主な特徴
・手技内容、看護対応内容が簡単に定型文化。
・バーコード読み取りによる簡便な使用物品登録。
・誰でも直感的に使用できる簡単な操作。
・登録された使用物品をプルダウン選択で記載。
・看護対応時間の簡単追記、挿入、削除。
・新規の物品材料を簡単にマスター登録。
・医事コードとの連携。
当院の看護師の業務において、今回のシステム導入前には以下の問題点があった。
・心カテ、PCI等で使用される物品の詳細な記載が難航していた。
・キーボード入力による看護記録は手間がかかっていた。
・緊急等で看護師が少人数の際、正確な記録を実施する事が困難であった。
・ローテーションの看護体制の為、
・経験の浅い看護師が対応する
・珍しい検査・手術内容
の際に正確な看護記録の記載が難しいケースがあった。
今回この「看護記録システム」を導入後、
・心カテ、PCI等の使用物品のバーコード読み取りによる登録とプルダウンでの選択という簡単な操作での記載。
・定型文による1ボタン看護記録で業務時間の大幅な短縮。
・緊急時、または看護師少人数の際でも正確な記録が実現。
・経験の浅い看護師の対応時、または珍しい検査・手術内容でも定型文により記録内容が正確・かつ均一化の実現。
以上のことが可能になった。
2. 正確な記録で誤記入を防止
また当院では循環器医師も「症例後の循環器レポート作成の参考」として看護記録を参照する機会が多かったが製品名・サイズの誤記入も少なからず発生していた。
バーコード読み取りによる正確な看護記録が実施される事により、「使用物品等の誤った記載が減少し、有効活用できるようになった」との評価も得るに至った。
看護師が循環器症例の記録を行う事において、複雑で多種類の循環器物品を正確に記載する事は非常にストレスだった背景があり、看護師と医師それぞれに大きなメリットをもたらす事ができた。
3. 物品レポートとその活用例
看護記録だけでなく、使用材料を医事課がチェックし、保険請求する流れも存在する。
従来は使用した物品のシールを看護師が貼り、医事課へ回覧する物理的な「物品レポート」を使用していた。
Kada-Report5では製品名・規格だけでなく償還価格・医事コード等を含めた物品レポートも作成が可能である。
当院では「カテ室・医事課・物品票」という名称にし、保険名称、保険点数を物品マスターから反映し請求業務に利用する事とし、バーコードで読み取られた物品情報を院内の電子カルテ上で医事課担当者が閲覧し請求漏れを防ぐ為の二重チェックツールとして活用している(図3)。
4. 管理・登録業務とルール化の重要性
問題点として一点挙げると、バーコード読み取りを実施する為には事前にデータベースをしっかりと管理・登録業務を行う必要がある。
当院では未登録の商品が発生した場合、まず一時的に看護師が仮登録を行う。その後、「カテ室・医事課・物品票」上に明確に判別するように表記されたものをシステム課担当者が登録作業を実施するルールで行っている。
データベース管理の担当者好みの簡単な方法で登録を実施できるよう、フォトロン社へカスタマイズを依頼。結果、手間暇がかかるマスター管理作業がスムーズに実施できている。
こういった院内の作業ルールを明確にし、各々がストレス無く作業を実施するフレームワークを形成できるかがこのシステムを最大限に活用する為の大きなポイントであり、関係者のチームワーク意識と綿密な打ち合わせによるルール化が重要であると考える。
高精度で便利な記録を実現する為に
昨今、放射線部管轄のアンギオ症例は循環器に限らず脳外科・心臓外科・放射線科等多岐にわたり、物品材料もより高度化、細分化、専門化してきている。
電子カルテ端末での看護記録や、手術室用の看護記録ツールを使用している現場は少なくない。しかしながら臨床場面に適した「記録」であるか、と言われると甚だ疑問であり、不便なまま使用しているケースが多く見受けられる。
看護師や医師が求めている「精度の高い・簡便な記録」というものを実現する事が高品質なチーム医療を提供する事に繋がり、院内の環境改善に繋がると思われる(図4)。
「動画サーバーシステム」という一見無関係なシステムの中に、このようなプラスアルファがあった事に驚くと共に、今後放射線部領域のチーム医療に必要不可欠なツールである事を実感し、様々な施設で活用される事を提言したい。
今回の当院の導入、活用事例が環境改善のヒントとなれば幸いである。