当院(図1)は2003年5月1日に、前身となる千葉市立病院の施設老朽化に伴い、隣接する青葉町に開院した病床数380床の施設である。15年10月には救急棟が完成し、年間約4000台の救急車を受け入れている。
診療科は内科、精神科、神経内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、血液内科、感染症内科、糖尿病・代謝内科、内分泌内科、リウマチ科、小児科、外科、消化器外科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、病理診断科、救急科の全26科である。
当院動画像ネットワークの変遷について
03年の開院時にT社製の動画像ネットワークシステムを導入、サーバはDVDチェンジャータイプの同社製のものを設置した。専用端末を血管撮影室、放射線科内読影室、循環器病棟、医局の4ヵ所に設置。レポートシステムはカテックス製のカテ台帳を使用していた。このシステムでは、動画参照は専用端末のみ、レポート入力は専用端末と指定した電子カルテ端末3台で行い、QCA・LVAは血管撮影装置本体で行っていた。
16年2月の心血管撮影装置更新に伴い、動画像ネットワークシステムも一新され、フォトロン社製のKada-Solution を導入する運びとなった。このシステムは、DICOM動画サーバKada-Serve(8TB)、DICOMビューワKada-View、レポートシステムKada-Report(被ばく管理オプション含む)、心機能解析ソフトCAAS5 から構成される。
動画サーバは以前と同様に頭腹部血管撮影装置機械室内に設置し、心血管撮影装置1台(Philips Allura Clarity FD 10/10)、頭腹部用血管撮影装置1台(東芝 Infinix CeleveVC)、ポリグラフ2台(日本光電 RMC-5000およびRMC-3000)、血管内超音波装置2台(Boston i-rab およびVolcano)、光干渉断層撮影装置1台(ST.JUDE Medical)と接続。専用端末を心血管撮影室、頭腹部血管撮影室、RI検査室、循環器内科病棟、医局、新医局の6ヵ所にそれぞれ1台ずつ2面モニタ構成で設置した。
レポート入力およびQCA・LVAは専用端末から行い、QCA・LVAは1フローティングライセンスとした。また、院内の電子カルテ端末からもKada-View Web を利用して動画観察が可能となった。レポートに関しても、PDFファイルで院内の電子カルテ端末より参照が可能である。
また、以前のサーバに保存していた動画像およびレポートに関しての移行作業はすでに完了している。
動画ネットワークシステムの特徴
動画サーバ:Kada-Serve
血管撮影、IVUS、OCT、超音波、CT、MRIなどのマルチモダリティ、マルチ画像対応で循環器画像の一元管理を可能にしている。
Webサーバとしての機能も有しており、別途サーバを用意することなく院内の電子カルテ端末からも動画参照を可能にしている。また、最新のバージョンではWeb配信する画像データはWMV形式とDICOM形式が選択可能となり、より高画質な画像が院内の専用端末以外からも観察可能となった。なお、DICOM形式でのWeb配信を利用する場合は、WMV形式のファイル保存が不要となるため、サーバをより効率的に活用できる。
Kada-Serve は、レポーティングサーバとしても運用可能なため、Kada-Report のために別途サーバを設置することも不要である。
ほかにも、心血管撮影装置から出力されるDICOM-RDSR(Radiation Dose StructuredReports:以下RDSR)も保存されるため、患者被ばくデータの管理にも適している。
DICOM動画ビューワ:Kada-View
ID・氏名など文字入力するごとに対象検査が絞り込まれる検索機能を持ち、素早い該当検査の検索が可能である。また、Kada-Report に表示中の検査に関しては、画像検索のキーをワンクリックするだけで画像表示できるため、検査中即座に画像を提示することが可能である。
Direct Access Bar により、最大画面表示における卓越した操作性とワンクリックでの患者リストや検査履歴、動画表示などの切り替えが可能である。
Kada-Interface により画像の表示エリア内を5つまたは9つのコマンドエリアに分割し、画像から目をそらすことなくパン・ズーム・フィルタ処理などの画像処理を直感的に操作することができる。
IVUS画像は、ビューワ上で長軸像を作成でき、病変長の計測も可能である。
ビューワ上でリアルタイムにサブトラクション処理が可能であり、リマスク処理やピクセルシフトの機能も有しているため、心カテ以外にも末梢血管、脳血管、腹部血管などにも有用である。
レポートシステム:Kada-Report
FileMaker をベースとしたサーバクライアント型のレポーティングシステムである。
心臓カテーテル検査の他に超音波や看護記録のフォーマットも標準装備され、カスタマイズにも柔軟に対応するため、施設ごとの運用にあったレポートフォームを作成することが可能である。
また、作成したレポート結果は、電子カルテ端末からPDF形式での観察が可能である。
NCDレジストリ支援機能を利用することにより、Kada-Report の内容をJ-PCI(NCD)レジストリーフォーマットへ容易に転記することが可能である。
従来の画像タグ情報を利用した被ばくレポートの他に、RDSRに対応した被ばくレポートの作成も可能となり、より精度の高いものが作成可能となった。被ばくレポートの詳細については後述する。
当院における動画像ネットワークの運用
サーバには、心カテのシネ画像の他に末梢血管や腹部アンギオのDSA・DA画像、IVUS、OCTの画像とポリグラフからのセカンダリキャプチャデータ、RDSRのデータを保存している。DSAで撮影した画像に関しては、サブトラクション処理を行っていないDAのデータもサーバに保存することにより、Kada-View のリマスキング処理やピクセルシフト機能を有効に活用している。
電子カルテ端末から参照するKada-ViewWeb の画像形式がWMVからDICOMに変更されたことにより、専用端末が設置されていない部門においても検査の予習・復習や患者へのIC、カンファレンスなどに使用する画像が全く劣化なく再生可能となり、医師やメディカルスタッフから好評を得ている(図2)。
放射線被ばく管理レポートの現状
心血管撮影装置はRDSRに対応しているため、透視・撮影ごとに線量情報・撮影角度情報をデータ収集することが可能となり、より詳細に患者被ばく状況を把握できるようになった(図3)。
しかし、装置から出力されるRDSRの値は患者照射基準点における空気カーマの値を使用するため、実際の検査状況とは異なる。そのため、イメージサイズの変更、寝台マットの有無、寝台の高さ変更、SID変更をした場合など詳細な線量データを収集し、補正係数を求める必要がある。
当院においては、筆者が線量測定を行い、フォトロンのレポート担当者が補正係数をレポートに反映させるという流れで線量補正を行った。また、装置から出力される寝台の位置情報を利用し、被ばく位置情報も正確に把握することが可能となっている(図4)。ネットワークメーカーでありながら、線量補正に関してのノウハウを豊富に持っていることは非常に心強く感じている。 ただし、最新の装置以外はRDSRに対応していないため、従来のDICOMタグ情報を利用した被ばく管理レポートの運用となる。当院においても、頭腹部用血管撮影装置は03年に設置された装置であるため、DICOMタグ情報を利用した被ばくレポートで運用する予定である。
RDSRの値を利用した被ばく管理レポートでは線量情報の精度は向上するが、検査が終了しないと装置からRDSRは出力されないため、DICOMタグ情報を利用する時のように、検査中にほぼリアルタイムに被ばく状況を把握することが困難であることも認識しておかなければならない。
病院インフラでの動画像ネットワークの位置付けと今後のあり方
従来、動画像ネットワークは専用端末による運用が必須であった。今回、電子カルテ端末からもDICOM画像の観察をすることが可能となったことにより、画像観察に関しては専用端末の必要性がなくなった。
また、電子カルテメーカーがFileMakerのインストールに対応可能であれば、指定した電子カルテ端末においてレポート入力、QCA・LVAも可能となり、専用端末を設置しなくてもレポート入力が可能となる。
これらの条件がクリアできれば、専用端末は血管撮影中の動画参照と他院への紹介用画像のコピーに用いるための1台程度で、その他の端末は電子カルテに相乗りする形の運用をすることにより、院内の限られたスペースの有効活用と専用端末の購入・管理に掛かるコストの削減が可能となるであろう。
また、動画像とそのレポート管理という位置付けから、看護記録や被ばく管理まで幅広く対応可能となってきた。
動画専用のネットワークということで、院内の他の部門と独立したネットワークと考えられてきたが、今後は院内ネットワークと共存する形となるのが理想であると考える。
伊藤 等(いとう・ひとし)
●67年千葉県生まれ。90年千葉大学医学部附属診療放射線技師学校卒。同年より千葉市立海浜病院放射線科勤務。13年より千葉市立青葉病院放射線科に勤務し、主任診療放射線技師として現在に至る。