導入事例

福岡大学病院様 最新動画像ネットワークが
検査現場にもたらした変化

福岡大学病院様

要旨:血管造影装置更新と同時に、老朽化していた循環器専用動画像ネットワークシステムの更新が行われた。新システムでは、単に循環器部門専用のシステムとしてではなく、稼働中の電子カルテ、静止画PACS、放射線部門システム等とのシームレスな連携を重視し構築を行ったので、放射線技師の立場から、更新によって何が変わったかを報告する。

福岡大学病院 放射線部 上村忠久様に執筆いただきました。
月刊新医療2012年1月号からの転載文

導入製品

当院は、1973年に開院し、92年に救命センター開設、11年1月に診療科目を統合する「センター化」を進め、新診療棟を開院した。このセンター化は、分野の違う専門医が垣根を越えて診察することを目的とし、心臓血管外科・循環器内科を統合した「ハートセンター」、消化器内科・外科を統合した「消化器センター」などを新設した。福岡市西部に位置し、高度先進医療の指導的病院、地域に開かれた中核的医療センター、災害や地域がん診療連携などの拠点病院としての役割を担っている(表1)。

表1 福岡大学病院紹介
表1 福岡大学病院紹介

当院における動画像システムの変遷

当院放射線部の循環器専用動画像システムは、03年、循環器血管造影において、デジタル化によってシネフィルムを廃止することを目的に構築された。当時の動画像システムは、動画サーバ、DVDチェンジャー、ワークステーション、高速ネットワーク線の敷設等が非常に高価な時代であり、院内に多くのビューア端末を設置することはできなかった。専用のネットワークで血管造影室、循環器内科病棟を結び、数台の専用ビューアで観察していた。外来など、専用ビューアがない場所で患者説明等に使用するためには血管造影室にて作成したCDを使用していた。
11年1月、新診療棟の開院と同時にハートセンターが新設され、循環器専用バイプレーン装置(シーメンス社)が導入された。また、11年4月には本館(旧館)の血管造影装置の更新も行われて、脳血管用バイプレーン装置、腹部血管用IVR —CTシステムが導入された。
最新の血管造影装置は、単なる検査の枠を超え、血管内治療などに対応するべく高機能化が進んでいる。動画像ネットワークには高度な治療方針決定や診断効率アップに対応できるシステムが要求される。
今回、動画像ネットワークを構築するに当たって、限られた予算の中で、院内どこでも動画像が観察できること、また電子カルテ、放射線情報システム、静止画PACSなど既に稼働しているシステムとのスムーズな連携を重要視した。なおサーバ容量の試算は、09年度の年間実績2280件の全血管造影検査・治療に対し、今後、全体で10%ほど増加することを前提に容量計算を行った。

Kada-Solutionの導入

表2 システム・モダリティー一覧
表2 システム・モダリティー一覧

条件に合うシステムとして、当院ではフォトロン メディカル イメージング(以下フォトロン)のKada-Solution を導入した。この動画像ネットワークシステムは、マルチモダリティ対応DICOM動画ビューア 「Kada-View」、マルチモダリティ対応DICOM動画サーバ 「Kada-Serve」、循環器領域向けレポーティングシステム 「Kada-Report」で構成されている(表2)。

「Kada-View」DICOM動画ビューア

Kada-View は、動画だけでなく、IVUS、CT、MRIなどの静止画DICOM画像も快適に表示できる。当院では、当初循環器血管造影動画像だけを表示することを考えていたが、この操作性や機能を知り、各科の要望によって脳血管造影や腹部血管造影もこの新しい動画像システムに保存している。
Kada-View では、ビューアでサブトラクションができ、脳血管造影、腹部血管造影のライブ画像から新たにサブトラクション画像を作成できる。もちろんマスク像変更や、ピクセルシフトなども簡単に行える。当院血管造影室では、DICOM出力可能なIVUS、ポリグラフも接続し動画像と同時に保存している。
動画ビューアの操作は独特である。アイコンやコマンドを最小限にし、動画の画面上のマウス操作で複数の操作が可能となっており、優れたインターフェイスである。直感的に操作が可能であり、習得には時間はかからない。

「Kada-Serve」動画サーバ

動画サーバKada-Serve は、動画DICOMデータを保存すると同時に、自動でWMVデータ(Windows Media Video)ファイル形式を作成し保存する。 Kada-Serve にはWEBベースで動作するKada-View Web が付属しており、このWMVデータを利用し表示する。専用ビューアでない電子カルテなどでも専用ビューアと同じ操作性で観察可能である。また、サブトラクションも可能となっている。DICOMデータ(原本画像)は診断用としてKada-Viewで観察し、WMVデータはKada-View Webで参照画像として表示する。
WMVデータは動画像DICOMデータと比較して非常に軽く、ネットワークへの負荷も最小限にでき、電子カルテなどのマシンスペックの低い端末でも快適に表示できる。電子カルテ用のネットワークを改造することなくそのまま利用できた。院内の電子カルテ約1600台、放射線部門端末、静止画PACSビューア等全ての端末で表示可能である。導入に際して、03年から動画像サーバに蓄積された過去画像データ約3TBをKada-Serve 用に変換し取り込んだ。古いDVDチェンジャーシステムであったため、取り込み作業は自動ではできず、フォトロンの協力により手動で行い約2ヵ月を要した。

「Kada-Report」レポートシステム

当院の血管造影レポートは、放射線科が行っている検査では、東芝メディカルシステムズ製(以下、東芝)静止画PACS(Rapideye)及びレポートシステム(放射線科専用)で記録されており、電子カルテから参照可能となっている。
しかし、その他の循環器内科や心臓外科、脳外科等は、各科独自のデータベースとレポートをクローズな環境で記載しており、電子カルテに結果を記事として記載したり、スキャナ取り込み文書として表示したりすることが多かった。
今回導入したKada-Report では各診療科別にレポートデータベースを構築した。Kada-ReportシステムはFileMaker ベースであり、各科ごとに独立して構築できたため入力項目やレイアウトなど自由に設計でき、過去のデータを変換し取り込むことも可能であった。入力されたカテーテルデータから血管造影レポートを作成し、診療支援統合システムYahgee(ヤギー)へ転送することにより電子カルテ上での閲覧を可能とした。このようなシステムの構築により、入出力が省力化され、動画像レポートと電子カルテとの連携がスムーズに行われるようになった。

電子カルテ、静止画PACS、放射線情報システムとの連携

Kada-View Web は、院内のネットワークに接続された端末であれば起動可能となっている。電子カルテ(NEC)からは、統合認証システムにてログイン後、職種により動画ビューアのアイコンが表示される。WEBベースのビューアであるので、端末ごとに起動のための特別なプログラムをインストールする必要がない。
放射線科医は静止画PACS画像と連動しているレポートシステムでレポートを書くが、動画も参考にしたい場合にはKada-View Web を別途起動し、手入力で検査を検索する必要があった。今回、静止画PACSと動画PACSが連携し閲覧を省力化するため、以下のような改造を行った。
 
● 動画サーバKada-Serve 側は、動画データを受信すると同時に、静止画PACSに代表画像として1検査に1枚の静止画を送信する。
● 静止画PACS側からみると、対象検査に1画像の代表画像が表示され、その画像を表示した状態で動画連携ボタンを押すと、その検査を選択した状態で動画ビューア「Kada-View Web」が起動する。
 
この改造により静止画PACSを表示中に、その中から必要な動画像検査を選択表示することができ、静止画PACSからのシームレスな連携が可能となった。また、Kada-View Web から、東芝レポートシステムへのキャプチャー画像貼り付けも可能である。
放射線情報システム(Infocom)には、以前から静止画PACS用のアイコンがあり、患者ID連携、検査番号連携などで静止画PACS画像を表示していた。今回の改造によって、静止画PACSからシームレスにKada-View Web が起動可能なので、特別に起動用のアイコンを作る必要がなく、改造は不要であった(図2)。

図2 動画システムと院内システムの連携
図2 動画システムと院内システムの連携

研究用データ出力

当院の電子カルテシステムおよび部門システムは、当院が定めたセキュリティーポリシーに則り、USBメモリなど外部出力用デバイスが使用できないようになっている。このため、診療情報提供用のDICOMデータは、医療情報部に申請し出力される。また電子カルテからの様々なデータの抽出は、申請を行って医療情報部の特定の端末で医師本人が行う。Kada-View にはCD作成機能など強力なツールがあるが、医師が自由にデータを取得することは禁止されている。このようなポリシー下で、本来の「Kada-View」の研究支援機能を使い切っていないのが現状であるが、当院では運用にてカバーしている。
研究用のデータ出力用にCD・DVDディスクパブリシャーMDS5400N(リマージュジャパン)を準備し、放射線部での管理のもと出力している。DICOM形式のデータであれば、申請書の提出後に出力している。汎用動画ファイル形式の出力の場合、医師はKada-View 上でDICOMデータを必要な形式(AVI、MPEG等)に変換し管理フォルダーに保存する。作業終了後に放射線部に出力申請書を提出し、放射線部でCD等に出力するという手順で行っている。煩雑な手続きが必要ではあるが、ウイルス対策や情報漏洩対策など病院セキュリティーポリシーに則った運用として協力をお願いしている。
Kada-Report に入力したデータから様々なデータ抽出を行うことも可能であり、今後はデータが蓄積され、研究用として利用可能となるだろう。

表3 新システム後の施行件数
表3 新システム後の施行件数

今後の課題

ーオフラインビューアの付属とSingle Flame画像の表示

Kada-View の操作インターフェイスは非常に使いやすく、専用ビューアKada-View本体から作成したC D、DV Dであればビューア付きで出力可能である。しかし、当院のCD/DVD出力には前述のようにディスクパブリシャーを使用しているため、このディスクパブリシャーメーカー付属ビューア付きでの出力となる。付属ビューアはDICOM動画像表示には不向きであり使いにくいため、ディスクパブリシャーでもKada-View を付属させることはできないかフォトロンに依頼しており、前向きに検討していただいている。
Kada-View Web は本来Multi Flame のDICOM動画データを変換したWMVファイル形式を表示するために設計されているため、血管造影検査で発生したCT画像や3D画像などSingle Flame 画像を表示することは不得意であった。しかし、この点を克服した次期バージョンがリリース間近であり、これにより利用の幅が広がることが予想される。

部内のシステムから院内全体のシステムへ

図3 システム構成・接続イメージ
図3 システム構成・接続イメージ

この半年の間に血管造影室では、新しい3台の血管造影装置導入と、動画像ネットワークの更新など劇的な変化があった。多種多様のシステムとの連携やそれに伴い複数の診療科との話し合い、医療情報部、用度課など事務系、装置メーカー、システムベンダーとの打ち合わせなど、多くのエネルギーを必要とした。血管造影の運用に当たった放射線技師担当者の負担も非常に大きかった。しかし、新しい動画像システムが軌道に乗った現在では、省力化に貢献し、部内のシステムから院内全体のシステムとして生まれ変わったと自負している。
動画ネットワークシステムはまだまだ発展途上である。今後も、アプリケーション、ネットワークシステムなどユーザーの要望を取り入れた進化に期待している。

上村忠久(うえむら・ただひさ)
●61年福岡県生まれ。83年九大医療技術短期大学部卒。同年より福岡大病院放射線部勤務。97年より、放射線部内HIS、RIS、PACS、電子カルテ等システム管理担当。診療放射線技師、医療情報技師。

福岡大学病院 放射線部 上村忠久
福岡大学病院 放射線部 上村忠久

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