導入事例

大分赤十字病院様 メーカーとの相談におけるシステム構築が業務フローの効率化を可能に

大分赤十字病院様

要:当院では、血管造影装置の旨更新に当た、動画像ネッりトワークシステムを併せて。院内導入したシステムとの連携にも配慮、システム構。運用し築をした開始から11年、導入を経過しの効果と課題を評価する。

大分赤十字病院 放射線科部 尾本技師に執筆いただきました。
月刊新医療2010年1月号からの転載文

導入製品

大分赤十字病院(図1)は大分市の中心部にあり、病床数は一般病床数340床、24診療科の急性期型総合病院である。数期の工期過程を経て2009年2月に病院の増改築が完了に至った。電子カルテ(富士通)、PACS(富士フイルムメディカル)を導入し、医療安全を含む質の向上、診療の迅速化、効率化を進め、病院機能の充実がなされてきた。
血管造影室は1室しか設けることができなかったため、現在は月、水、金曜日に放射線科がIVRを、火曜日は終日、木曜日は午後より循環器科が主に心臓カテーテル検査を施行している。シャントPTAは紹介患者が多いこともあり、随時施行している。
年間の検査件数は、心臓カテーテル検査は400件、うちPCIは120件、シャントPTAは150件、放射線科による血管造影は140件行っている。
血管造影装置は97年に島津製作所製デジタルシネシステム(シネレス)が導入され、08年11月にBRANSIST SarireVC17 とHF9のFPDデュアルプレーンに更新された。それと同時にフォトロン メディカル イメージング(以下フォトロン)製動画像ネットワークシステムも構築し、運用経験を得たので報告する。

導入したシステムの構成と運用

図2 システム構成図
図2 システム構成図

1 システム概要

図2に本院導入システムについて記す。
導入に当たっては、装置とは別に動画像ネットワークを数社比較検討した。
前システムでも使用されており経験があること、非DICOM形式である過去CDデータを再生可能であること、電子カルテへの配信ができること等から、当院では結果としてフォトロン製のシステムを採用した。
動画像サーバ部はKada-Serve、動画像ビューワは、Kada-View を5台、循環器レポートシステムKada-Report、心機能解析システムはPie Medical Imaging 社製CAAS5(QCA,LVA)をフローティングで1ライセンス。接続装置は、島津製作所製血管造影装置(BRANSIST Sarire)、日本光電製ポリグラフ(Cardio Master)、IVUS装置はボストンサイエンティフィック製ギャラクシーIIを接続している。

2 動画像ビューワ

まず使用を開始して感じたのは、動画像ビューワKada-View の操作性の良さと高速性である。画像を検索、表示するまでは瞬時に行うことができる。データ検索は患者番号、検査番号、氏名での検索のほかに、カレンダーからの検査日指定及び、ドラッグでの検査日期間の指定ができ便利である。また、画像を表示させた後も、画面上のインターフェースのおかげで画像から目を離すことなく、拡大縮小、再生、停止、コマ送りや画像濃度調整やフィルタ処理をすることが可能である。
また、実用上役立っているのがマルチクエリーの機能である。当院では、富士フイルムメディカル製PACS、Synapse を採用しているが、Kada-View から、PACSサーバ、動画サーバの両方に同時に検索をかけることが可能であり、結果も一覧できるので、画像が格納されているサーバの場所や使用端末を考えずに手軽に使用できるのが便利だ。

3 動画像サーバ

動画像サーバは通常は専用であるが、フォトロン社製のシステムの場合は循環器レポートサーバとハードウェアを兼用している。OSはWindowsServer2003、データベースはMicroSoft 社製SQL Server2005 を採用している。
放射線科血管造影レポートは既存のF - RISを利用し、循環器科検査結果レポートはKada-Report を使用している。
Kada-Report は電子カルテシステムとのベンダー間の接続ができず今回は断念したため、プリントアウトしスキャナーで電子カルテに取り込んでいる。また、患者情報は画像付帯情報から得るため、既往歴、リスクファクター等は検査の都度入力しなければならない。これは今後検討しなければならない問題である。
動画像サーバKada-Serve は、単にDICOM画像をストレージするだけでなく、院内配信用の圧縮画像を自動生成する。生成される圧縮画像はWMV(WindowsMediaPlayer)形式である。圧縮形式としては、ほかを選択することはできないが、現在の動画圧縮汎用ファイル形式としては一般的である。圧縮率は94%で設定した、元画像の約6%の容量であるためネットワークへの負荷を軽減でき、高速なストリーミング配信を可能にしている。また圧縮率と画質を両立できていると感じているので、特に不満はない。
 
このWMV形式の圧縮画像の利用目的は2点ある。
 
1点目は「長期保存」である。通常、動画ビューワで参照するのはDICOM画像であるが、全く同じ操作でこの圧縮画像を検索表示できる。サーバ内で生成された圧縮画像は、将来DICOM画像を削除した後も圧縮画像は参照が可能である。
 
2点目は「院内配信」である。当院は、富士通製電子カルテシステムを採用している。電子カルテ端末上で、圧縮画像を参照する際に用いるビューワは、OS に付属するWindowsMediaPlayer であり、院内各所に配置されている電子カルテ端末から、この圧縮画像を参照できる。また、専用端末やライセンス費用も不要なので、導入する際には合理的であると納得していた。
 
しかし、実際に使用してみると少し不便である。MediaPlayer で再生する際は、ストリーミングで1ショットごとに再生される。ループ再生ができないし、再生の度にストリーミングするので少し待たされるからである。これはWindowsMediaPlayer の機能であり、その制約ではあるが、ほかの性能には満足しているので惜しい。フォトロンには今後の改善を望みたい。

対策を立てることでスムーズに行えた過去データ移行

次に、システム導入時に大きなファクターを占める「過去データ」について述べる。
当院では、更新前の血管造影装置は島津製作所製を使用し、画像の保管はCDで行っていた。DICOM出力もできたのだが、検査中はCDへの書き込みができず、書き込み時間が2〜3倍かかるため、ワークフローを考慮しメーカオリジナル形式で保存した。懸案となったのは、このCDのフォーマットである。島津製作所独自のフォーマットであり、通常のDICOMビューワでは開くことができない。したがって、データを新しいサーバに移行することが不可能であった。ところが、フォトロンに相談したところ、DICOM形式への変換ソフトを使用してデータ移行が可能となった。
データ移行は時間がかかることもあり、循環器科医師と協議した結果、過去2年分を移行し、残りは必要に応じてその都度移行することとした。過去2年分の移行はフォトロンに協力いただき、約2ヵ月間(実働32日)かけてCD約1200枚を移行した。
また、循環器科医師が独自にファイルメーカーで作成していたカテ台帳システムの過去データについても同様の問題があったが、このデータコンバートについても、フォトロンの技術スタッフの協力によりすべてのデータ移行が実現した。
このような問題については、一昔前であれば「仕様の違い」は埋め難い部分があった。言い換えれば、システムに合わせて業務を一部変更したり、過去データを移行せずに別管理したりと煩雑な運用になることがあった。今回の動画像ネットワークシステムの導入に当たっては、あらかじめフォトロンとこれらの問題点の対策を相談した。結果として、これらの問題点はすべて解決され、快適に運用している。同様の問題点を抱えている施設においては、フォトロンに相談してみることを勧める。

動画像ネットワークシステム導入前後でのワークフロー

次に、技師の立場から動画像ネットワークシステム導入前後でのワークフローを評価したい。血管造影装置とポリグラフはMWMにより、患者情報、検査情報入力のミスを防ぎ、画像の患者情報が正確であり、電子カルテとの検査番号入力の手間と負担を軽減することができた。
更新前の装置ではCD保存であったため、検査終了後CD保存が終らなければ、検査室以外では画像を閲覧することができなかった。また、CDは専用動画ビューワのある場所でしか再生できない。そのため、患者説明は検査室で行うか、CDができるのを待たなければならず、検査数によっては医師が夜になってからやっと着手できるという状況であった。しかし現在は、撮影後自動転送によりKada-Serve に保存され、検査終了直後には待ち時間なく端末がある場所なら画像を閲覧できる。今回は増改築に併せて行った血管造影装置、動画像ネットワークの導入であったため、隣接して診察室が設けることができた。そのため次の検査の準備の間に患者説明を行うことも可能となった。

過去画像も端末があれば簡単に検索できるため、ストレスなく参照でき、CDを探す手間がなくなった。動画像ネットワークの導入により、CDへのデータ保存、移動、保管、貸出等の手間がなくなり、効率化が図られた。また操作室の端末から検査室内のモニターにKada-View の映像出力を分配することにより、PACSサーバ、動画サーバ両方の過去検査画像を表示させることが可能で、検査中も過去画像を参照できるため、医師からは好評である(図3)。
血管造影検査にかかわる技師、医師も含めて時間を有効に活用できるようになり、生産性が向上したと実感している。患者様にとっても検査直後に説明を受けられ、待ち時間の大幅な短縮を実現し、患者サービス向上につながった。

図3 モニター上に分配させた「Kada-View」の映像出力
図3 モニター上に分配させた「Kada-View」の映像出力

今後は問題解決を図りたい

今回当院に導入した動画像ネットワークシステムと運用効果の紹介をした。これまで述べてきたように、動画像ネットワーク導入により得られる業務におけるメリットは大きいものであった。これは、導入に当たってあらかじめフォトロンと問題点への対策を相談したこと、また解決するための柔軟な対応により、当院の期待に十分応えるシステムが構築できたからである。
しかし、レポートと電子カルテとの接続等、未解決問題もある。より有効にネットワークを利用するため問題を解消していきたい。そのためにはベンダーの協力、またベンダー同士の連携が重要である。

図4 診察室
図4 診察室

尾本健一(おもと・けんいち)
●68年大分県生まれ。91年京都医療技術専門学校卒。91年〜96年北九州総合病院放射線科勤務。同年より、大分赤十字病院放射線科部勤務。

大分赤十字病院 放射線科部 尾本技師
大分赤十字病院 放射線科部 尾本技師

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