導入事例

坂総合病院様 [今検証するシステムの有用性]
PACSと動画システムの連携と画像保存

坂総合病院様

要旨:坂総合病院は、外部保存連動型PACSを導入している。動画システム更新時に、過去のデータとともに動画データも外部保存している。2つのシステムと電子カルテを連動させて診療を行い、循環器科では使いやすいシステムになっている。

※坂総合病院 放射線室主任 田中由紀様に執筆いただきました。
 月刊新医療2018年1月号からの転載文

導入製品

当院の紹介

宮城厚生協会は、坂総合病院をはじめとする4病院といくつかの診療所で構成されている。4病院と健診センター、1クリニックはそれぞれ同じ外部保存連動型PACSを導入しており、同じ外部データセンターへ画像を保存している。また、坂総合病院と北部診療所、長町病院と錦町診療所は画像を共有し、病院のサーバで管理をしている。各病院とはID統合などの連携はしていない。
 
坂総合病院は塩竈市にあり、近隣の多賀城市、松島町、利府町、七ヶ浜町、仙台市東部を診療圏としている。ベッド数は357床で、1日の外来数約800人、救急車受け入れ台数は年間3800台程度で、塩竈地区の中核病院となっている。
 
一般撮影装置(富士フイルム・FPD)3台、 64列CT(GE・LightSpeed VCT vision)1台、1.5TMRI(シーメンス・Avant)装置1台、透視装置(東芝)2台、頭腹部血管造影撮影装置(シーメンス・AXIOM Arti dTA)1台、循環器撮影装置(シーメンス・AXIOM Artis dFC、フィリップス・Allula-Clarity)2台、RI装置(シーメンス・eCAM)1台、結石破砕装置(シーメンス)1台、ポータブル撮影装置(富士フイルム)2台が稼働している。また、心エコー装置(シーメンス)2台、下肢動脈の動画が撮影できるエコー装置(日立、東芝)は2台ある。また、隣接しているクリニックに、一般撮影装置(コニカ)2台、乳房撮影装置(富士フイルム・AMULET Innovality)1台を設置している。
 
当院の動画保存の検査数は2016年度実績で、冠動脈造影が460件、冠動脈治療160件、末梢血管治療(EVT、シャントPTA含む)135件、心エコー検査3952件、下肢動脈エコー372件である。

当院の画像管理

2005年11月に本院を新築した時にPACSと動画システムを導入し、フィルムレス化を行った。この時点から、電子カルテとPACS、動画システムは連携させており、所見歴から検査を選択して、画像を閲覧することができるようにしている。また、電子カルテの所見欄にはレポートシステムのテキストデータを自動で貼り付けており、PACSのレポートと動画システムのレポートは、電子カルテの所見と同じ所見が存在するようにしている。
PACS導入後8年が経過し、院内サーバの容量も多くなってきたので、13年にPACSを外部保存連動型PACS(J-MACシステム:Xtrex FESTA)に更新した。旧サーバに保存していた画像データは外部データセンターで保存し、院内サーバには過去 年分のデータを保存することとした。過去のデータは外部データセンターからダウンロードし、閲覧する運用とした。

動画システムの更新

 15年に循環器インターベンションセンターを開設し、手術室に隣接していた検査室から循環器撮影装置を移設し、また、末梢血管治療にも対応できる循環器撮影装置を増設した。同時に動画システムも更新し、現在のフォトロン社製Kadaシリーズを導入した。

 
旧システムではDVD-RAMでデータを保存しており、手動でデータ移行を行った。動画システムで外部保存システムが装備されていないため、PACSサーバを経由して外部データセンターへ保存するシステムにし、動画データも外部保存とすることができた(図1)。

図1 システム構成図-動画システムとの接続

 院内PACSサーバには過去2年分を保存しているので、同様に院内の動画サーバにも過去2年分を保存するようにしている。動画データも静止画と同じ外部データセンターに保存し管理をしているため、PACSの検査一覧上にも検査は表示されているが、PACSサーバ内には画像保存は行っていない。

 
PACSの検査一覧には古い検査と同様にクラウド画像の表示になり、表示する場合には、外部データセンターから院内サーバにダウンロードを開始し、胸部写真1枚なら5秒程度、動画はデータ量によって変わるが、ある程度の時間があればPACSで表示される。院内サーバにダウンロードされれば、動画システムでも表示することが可能となる。
 
動画システム専用端末は撮影装置に1台ずつ、インターベンションセンター内カンファレンス室に1台、心エコー室に1台、エコー室に2台、循環器病棟カンファレンス室に1台、放射線室には管理端末として1台配置している(図2)。

図2 動画ネットワークシステム構成図

Kada-Viewについて

 院内の動画サーバから削除されている古い検査は外部データセンターからダウンロードを行い、 Kada-Viewにて表示することになる。院内サーバから削除されている検査をビューワで動画サーバのみ指定すると、サムネイル画像のみ表示される。PACSサーバを指定して古い検査をクリックすると、ダウンロードを開始する。PACSサーバにダウンロードされるとサムネイル画像は表示されないが、動画画像は表示され、解析することも可能になる。ダウンロードされた画像は必要に応じて、手動で動画サーバにアップロードを行う(図3)。

 
これで、古い画像も動画サーバで表示することができるようになる。アップロードされた画像は1週間保持し、その後は、自動で院内サーバから消去される。外部データセンターからのダウンロード時間は画像容量によって左右されるが、大抵は5分程度で、動画サーバにアップロードすることができる(図3)。

図3 動画サーバへのアップロード

 また、 Kada-ViewはPACSサーバ内の画像表示も可能で、CT画像で作成した3D画像と動画を並べて表示させることや過去検査と現在の検査を並べて表示させて、比較することもできる。

 
このシステムを導入してから心臓カテーテル検査、EVT時のIVUSやポリグラフの画像も保存をしており、検査時のデータが全て保存され、一元管理ができるようになった。

Kada-Reportについて

 Kada-Reportは医師の要望を取り入れ、カスタマイズを行った。心臓カテーテル検査、PCI、EVT、心エコー、下肢動脈エコー全ての検査でレポート入力を行っている。心臓カテーテル検査、PCI、EVTは患者の基本情報、使用したデバイス、手技、また、検査中の看護記録も入力している。

 
医師だけでなく、看護師、臨床工学技士、診療放射線技師それぞれが入力することになっている。入力したレポートは電子カルテからWeb連携し、PDFファイルで表示することができる。レポート内の医師が入力した所見は、入力完了後に電子カルテ出力をクリックすることにより、テキストデータを電子カルテの所見欄に自動で貼り付けている。
 
この電子カルテの所見は、カルテ入力時にも使用することができ、また、システム更新時に旧システムから移行しなくても、電子カルテシステムからファイルとして出力し、新システムに移行することが可能となる。

 看護記録は旧システム時には紙運用を行っていたが、このシステム導入時より電子化することができた。入力方法も簡便で、手技や薬剤投与などの項目を選択しクリックした時間がそのまま記録時間になる。記録時間は修正が可能なので、後から追加することもできる。検査終了後に電子カルテ出力をクリックすれば、電子カルテから閲覧や印刷ができるようになる。

 
使用したデバイスは臨床工学技士が入力を行い、診療放射線技師は被ばく線量、透視時間、使用した造影剤量などを入力する。また、検査内容が一目で分かるように、放射線画像用のレポートも作成している。
 
心エコーや下肢動脈エコーは、検査技師がレポートを作成している。旧システム時には心エコーの動画データのみを保存して、所見は電子カルテに直接入力を行っていた。 Kadaシリーズを導入してから、下肢動脈エコーの動画保存および心エコーと下肢動脈エコーのレポート入力を開始した(図4)。

図4 下肢動脈エコーのレポート入力
図4 下肢動脈エコーのレポート入力

こちらもPDFファイルで電子カルテから閲覧することが可能になっており、所見のテキストデータを自動で電子カルテの所見欄に貼り付けている。他施設の検査も保存し、検査時に閲覧できるようにしている。レポート一覧画面に他施設画像の項目を作成し、紹介病院名を入れて管理している。保存する際にはIDのみを当院のIDに変更し、1患者の検査として表示させている。

Kada-Serveについて

サーバ内の管理は専任の放射線技師が行うこととしており、患者情報の変更や画像の削除、検査統合分離なども行っている。他施設の画像のID変更はサーバの設定変更になるので、画像の取込には専任の放射線技師が行うことになる。また、PACSの検像システムのように融通がきかないため、改善を要望している。

Kada-Recについて

 先日、新たに Kada-Recを導入した。今までは透視および撮影時モニタをHDDにそのまま録画していたので、透視画像を見直す場合、を取り外しパソコンで再生しなければならない上、検査日のみのフォルダの中から当該検査を探し再生するので、使用することは少なかった。

 
Kada-Recは患者情報を取得することによって患者単位に透視および撮影画像をMPEGで保存し、サーバで管理ができる。X線が出ている透視、撮影後にサーバ内にシリーズ単位として保存され、時間も表示される。再生は動画システム端末の Kada-RecのWeb機能で閲覧することができる。
 
また、シリーズ単位で端末内にもMPEGとして保存することも可能で、DICOM画像からMPEGに変換する手間が省くことができ、画質の劣化もないことから学会や講演にも使用することができる。MPEG画像のため、画像容量も少なく、サーバへの負担も少ないが、外部データセンターへの保存は今のところは考えていない。

動画システムの活用

 病院システムのIT化により、放射線検査、超音波検査、内視鏡検査ともフィルムレス化が進み、病院で抱える画像データは年々増加していく。また、画質向上とともに1枚単位の画像容量も大きくなり、院内のサーバ容量も増やさなければならない。

 
当院では、外部保存連動型PACSの導入により、院内サーバを増やさず外部データセンターで保存することを選択した。そこに動画システムのデータも保存することができたため、サーバ容量も少なくすることができた。
 
また、 Kadaシリーズの導入により、新たなレポートシステムの構築ができ、看護記録のペーパーレス化が図れ、各検査のレポートをPDFファイルで電子カルテに表示することが可能となり、臨床においても有用となった。また、過去検査を外部データセンターに保存することにより、旧システムにおいて手動でDVD-RAMから過去検査をサーバへ入力する手間もなくなり、過去検査の閲覧や解析もスムーズに行われるようになった。
 
今後はこのシステムを臨床において十分に活用しさらなる改善を試みることにより、今以上に業務効率が図れるシステムを構築していきたい。

 田中由紀(たなか・ゆき)

●66年福島県生まれ。88年東北大医療技術短期大学部診療放射線技術学科卒。同年から財団法人宮城厚生協会坂総合病院入職。現在同院放射線室主任。

坂総合病院 放射線室主任 田中由紀
坂総合病院 放射線室主任 田中由紀

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