導入事例

札幌心臓血管クリニック様 処理速度、高い操作性が確実に循環器診療の質を向上させている

札幌心臓血管クリニック様

要旨:札幌心臓血管クリニックは、循環器に特化した検査・治療機器を揃えて08年に開院した。それに伴い、循環器動画像ネットワークの導入は不可欠であった。そのネットワーク運用と有用性を報告する。

札幌心臓血管クリニック藤田理事長に執筆いただきました。
月刊新医療2009年1月号からの転載文

導入製品

循環器専門クリニックに必要な設備

札幌心臓血管クリニック(図1:以下当院)は2008年4月1日、患者様の全身血管のケアと治療を目的とし、札幌市東区に開院した。
循環器用血管造影装置1台・エコー装置2台・64列マルチスライスCT(すべてPHILIPS社製)など、全身の血管に対する対応ができるように検査設備を整えた。
血管造影画像に関しては、心臓カテーテル検査・下肢造影画像が主となり、フレーム数も多く、撮影数も非常に多くなること等から静止画像ネットワークと動画像ネットワークを分けて入れることにした。複数ある動画像ネットワークシステムの中から、当院ではPhotron 社製のサーバであるKada-Serve とDICOM VIEWER であるKada-View を選定した。
今回はPhotron 社製動画像ネットワークを選定した理由を含め、循環器における動画像ネットワークの有用性と運用の稼働環境・メリットを、簡単ではあるが述べさせていただく。

動画サーバとビューアの稼働状況

1 動画サーバ

Photron社製Kada-Serve(以下Kada-Serve)に循環器用血管造影装置からのDICOMデータを512×512マトリックス・8bit 諧調で受信して保存している。動画データは転送されると同時に、Kada-serve 内にてWindows Media Video File(以下WMV)形式へエンコードされ、DICOMデータともにサーバで保存される。保存領域はRAID5の1TBである。開院前の推定では約2年半程度の容量と考えていたが、実際は1年半程度で一杯になるデータ量であり、今後ハードディスクの追加が必要である。また、HDDがクラッシュした際のデータ復元用に、デジタル磁気テープLTO(200GB)にも毎日バックアップしている。
Kada-Serve 自体はネットワーク室を設けて設置しているが、モニタとストレージの大きさ程度であり、血管造影装置の機械室の片隅にも置けるようなサイズである。

2 動画ビューア

Photron社製Kada-View(以下Kada-View)は3台設置している。外来診察室・カテ操作室・病棟IC室の使用頻度の高い部屋に設置した。Kada-View 端末PCはPACS(Tech-Matrix 社製SDS VIEWER)用端末PCと兼ねているため、非常にコンパクトである。Kada-View は3台のみであるが、それ以外でも簡易ビューアにより閲覧可能である。

膨大な量のデータでも処理速度が速くスムーズな診療に役立つ

図2 システム構成図
図2 システム構成図

循環器領域における血管造影といえば、心臓カテーテルや下肢造影検査のような検査だけでなく、冠動脈形成術・ステント留置術(以下PCI:percutaneous Coronary Intervention)や下肢動脈形成術・腎動脈形成術・鎖骨下動脈形成術(これらをまとめて、以下PPI:Percutaneous Peripheral Intervention)など、画像診断を利用した治療法が確立し、浸襲性の低い治療として広まってきている。検査だけでなく治療も、となると、造影装置による画像のデータ量は膨大な量となってきた。その中でもCAGやPCIなどフレーム数の多い画像は特にデータ数が多く、サーバに対する負担も多くなり、画像の読み込みに対する速度が遅くなってしまう。したがって、動画像に関してはPACSとは別のサーバとビューアを設けることによって、シームレスなワークフローが可能であると感じている。次にその例を挙げる。
カテ室内のモニタに過去に行った画像を閲覧できるように、Kada-View の画面をミラーリングできる設定にしている。これにより、PCIの際に、過去の画像より多方向の角度を確認してBest Angle を見つけられるため、最低限の撮影で行うことができる。そうすることで被曝量や造影剤使用量を少しでも減らすようにしている。PCIの際のリファレンスとして使うなら、慢性完全閉塞(CTO:Chronic Total Occlusion)の時、特に有効である。また、PCI時だけでなくPPIなどの治療を行う際も、撮影して間もなくKada-View で閲覧できるためにリファレンス画像としても使用できる。動画によるリファレンスであるため、下肢PPIのように長い範囲の治療でもLIVE画像に合わせて場所の確認ができる。
また、病棟にあるIC室で患者様や御家族に説明する際も、画像転送や読み込みが非常に速いためにCAGが終わってすぐに説明ができるし、CAGを行いそのままPCIが必要である場合でも、御家族がIC室に案内されてくるまでにはすべての画像が転送されており、画像の読み込みに関しても待つことがないので無駄な時間がなくPCIに移れる。
循環器領域に限ってではなくすべての医療業界でいえることであるが、検査機器の発展に伴いデータの量が増大していくのに対して、このようにデータの重さを感じずにストレスなく診療を行えること、それだけでこの上ない有用性を感じるし、こういった機器を開発されている医療機器メーカーには常に感謝している。

Photron 社製のビューアとサーバのメリット

1 Kada-View

図3
図3

Kada-View の特徴として、まず挙げられるのは、動画像ビューアの中でも類を見ないレイアウトとその使いやすさである。レイアウトはかなりシンプルである。
図3に示すように、左が検索項目・右が検索されたオブジェクトとなっており、検索項目もIDや名前はもちろん検査日をカレンダー上でも検索でき、カレンダーで範囲を選べば複数日の複数患者様の画像を検索することもできる。検索されたオブジェクトをひとつ選択すると、その下にサムネイル表示されるため分かりやすい。

図4
図4

画像表示では、図4に示すようにやはりシンプルな構成になっている。画像の表示内が9つのエリアに分かれており、それぞれのエリアごとに画像操作系のコマンドが割り当てられている。基本的にはこの9つのコマンドのみの操作で十分であり、行いたいコマンドエリアにカーソルを持っていきドラッグするだけなので、非常にスピーディーである。この単純な操作で画像拡大やパン、コマ送りだけでなくブライトネス、コントラストやガンマ補正、フィルターなども変更できるので、初めて操作する人でもすぐに使用できる。
他に、このKada-View の非常に優れている点が、DICOM画像を容易に多種の画像形式に変更できることである。静止画ではJPEG、BMP、TIFF、動画ではAVI、MPEG、WMVといった形式変更に対応し、学会資料用の画像としても扱い易い。

当院には、Kada-View は前述のように3台のみであるが、もちろん血管造影画像の需要はそれだけではなく、医師以外にコ・メディカルにも必要である。Kada-Serve にてWMVにエンコードされたデータは院内の電子カルテ端末にストリーミング配信されるため、院内のどこでも誰でも(患者情報が保護される範囲内で)画像を閲覧することが可能である。
このKada-View は、画像閲覧だけでなく操作するすべての行為がシンプルでスピーディーなのが特長であり、最大のメリットであると感じている。

2 Kada-Serve

Kada-Serve の特長はレスポンスのよさである。クライアントPCのlocal disc にキャッシュされていない過去の画像に関しても、ストレスなく参照できる。
導入時は、現地サービスが常駐していないことに不安を感じていたが、実際はリモートでの監視下であり、何か問題が発生してもほとんどが、オンラインか電話誘導によるもので解決される。実際、毎日のように行っるカテーテル検査でも、Kada-Serve による支障は1度もない。日常管理も非常に簡便で、月に1度程度のシステムの再起動とバックアップ用のデジタル磁気テープLTOの残量の確認程度である。
Kada-Serve に関しても、非常に簡便であるが、それゆえにサーバ管理がおろそかになりやすい。簡便であるからこそ、日常の点検や管理には気を付けなければならないと考える。

循環器領域では動画像ネットワークはもはや不可欠な存在

今回は、Kada-View とKada-Serve を中心に当院の動画像ネットワークシステムについて述べさせていただいた。いまやフィルムレス時代となりつつある今日、循環器領域では検査から治療まで画像データが存在するため、動画像ネットワークの存在は不可欠である。このネットワークが院内のローカルなものだけではなく、連携施設とのネットワークに拡大できるようになる時代も決して遠くはないであろう。しかし、そういったネットワークが安全につながるためには、システムのセキュリティをより高めなければならないし、人的な意識をも高めていかなければならないなどの問題点も数多くある。

藤田勉(ふじた・つとむ)
●61年北海道生まれ。86年旭川医大卒。同年から08 年2月まで、医療法人徳洲会に在籍。08年3月、札幌東徳洲会病院院長代行の職を辞して、同年4月、札幌市東区に札幌心臓血管クリニックを設立。以後、理事長として現在に至る。

札幌心臓血管クリニック藤田理事長
札幌心臓血管クリニック藤田理事長

関連する導入事例