導入事例

富山大学附属病院様 動画像ネットワークがもたらす効用について
─高まる情報共有の必要性

富山大学附属病院様

要旨:医療の高度化・専門化に加え、医療資源の有効利用からも情報共有の必要性が高まっている。動画像も同様に、血管撮影室以外の場所においても、同等の精度で迅速かつ容易に参照・評価できることが必要である。

富山大学附属病院 放射線部長 瀬戸光様、診療放射線技師長 新谷光夫様、副診療放射線技師長 熊谷道朝様、診療放射線技師 橋本将彦様に執筆いただきました。
月刊新医療2012年1月号からの転載文

導入製品

施設概要

ー病院再整備計画が進む

当院は、高度先進医療を提供する「特定機能病院」として厚生労働省の承認を受けており、21世紀において、良質で適切な医療を効果的に行うための医療供給体制を作る目的で、1992年の医療法の改正により従来の病院区分が見直されて設けられることになった、新しい構想に基づく病院である。
79年10月に開院し、病院再整備計画に伴い、2011年1月からは新設の南病棟が稼働を始めている。同年7月から、第2期工事として旧病棟の改装・手術室の増室・災害救急センター(仮称)の整備を行い、病床数は現在の612床と変わらないが、14年3月の第2期工事完成時にはさらに高度な機能を備えた特定機能病院として生まれ変わる予定である。さらにその後、外来部門の増改築・中央診療部門の改装等を順次進めていく計画である。

動画像管理の変遷

02年の診療報酬改定より、シネフィルムのコスト請求ができなくなったのを機にオフラインのシネフィルムレス化を03年に行い、07年11月までCD-Rによるオフライン運用を実施してきた。CD-Rによるオフライン運用では、検査後に診療科(コピー)用・放射線部(マスター)保存用の2部をCD-Rに記録し、管理を行っていた。診療科はCD-Rさえあればどこでも画像参照可能であったが、別々の場所で同時に参照することはできなかった。
07年2月より循環器撮影装置の更新に伴い、動画サーバ「Kada-Serve」システム(フォトロン メディカル イメージング社製)を導入し、オンラインのシネフィルムレス化を行い、ネットワークによる動画像参照を開始した。これにより、IVUS画像の保存も可能になった。また、別々の場所でも同時に同患者の画像を参照することが可能になった。しかし、参照はDICOM動画専用端末(以下:Kada-View端末)の設置場所に限られていた。
続いて、10年に頭頸部血管撮影装置の更新に伴い、DSA画像の動画サーバ保存を開始した(フィルム併用運用)。そして、PACSシステム(富士フイルム社製「SYNAPSE」)の導入により、11年8月から完全フイルムレス運用を開始し、先に導入した動画サーバ「Kada-Serve」システム更新に伴い、専用端末のDICOMビューワ「Kada-View」を読影室や未設置であったカンファレンスルームに増設した。
これを機に、電子カルテでの動画Web配信を開始した。Web配信によって、今までKada-View 端末でしか参照できなかった動画を、院内の電子カルテ端末でなら、どこでも参照可能となった(図1)。ただし、ネットワークのトラフィックも考慮に入れて元画像の6%圧縮での配信のため、あくまで参照や患者説明用であり、読影・解析や診断を行う際は、Kada-View 端末で行ってもらっている。それでも、院内の電子カルテ端末であればどこでも、いつでも動画が見られるという利点は大きい。 

図1 当院のシステム構成
図1 当院のシステム構成

Web配信の導入経緯

動画サーバの導入は、循環器領域(シネレス)から始まった。循環器領域の検査では、静的画像評価と動的機能評価が行われる。例えば冠動脈造影において、前者は血管内腔の辺縁性状や狭窄度、最少血管径であり、後者は、冠血流の速さやパターンなどである。この静的・動的情報を同時に記録するためにシネフィルムに記録・保存を行っていた。しかし、症例数が増えるにつれて保管場所が問題となること、過去の画像を探す手間がかかるなど問題があった。一部デジタル化されシネからCD-Rでの記録・保存となったが、問題の解消には至らなかった。
循環器領域において、総合評価の迅速性は重要である。血管撮影室以外の場所においても容易に参照・評価できるシステムが望ましい。そのため、動画サーバを導入、院内ネットワークでの動画配信に至った。
完全フィルムレス以前の運用では、循環器撮影装置や血管撮影装置、IVUS、心エコー装置などの動画の観察方法はKada-View 端末のみ参照が可能であり、院内HIS端末からの参照ができなかった。そのため、Kada-View 端末の設置されていない外来などでは、診察の合間にカテ室まで足を運んで、その日の検査を確認するしかなかった。外来へのKada-View 端末設置を要望されたが、ネットワークおよび設置スペースの問題から設置不可能であった。
元々フォトロン社の「Kada-Serve」動画サーバ本体には、DICOM原画像が保存されると同時にWMV(WindowsMediaVideo)形式のファイルが自動的に生成・保存されていた。将来的なWeb配信を視野に入れて、動画サーバには導入当初から設定されていたのである。
そこで、今回のPACSシステム更新を機にPACS/HISシステムと接続を実現し、ネットワークに負荷をかけずに動画像の配信を目指し、Web配信による動画像参照を考えた。PACS端末からID連携を行うことでカルテ展開中の患者と画像参照患者が同一となるようにし、Web専用動画像で参照できるシステムを目指した。

動画像ネットワークを構築して

図2 SCOPE システムとの連携
図2 SCOPE システムとの連携

11年8月から院内動画像Web配信が実現したことにより、各科外来及び病棟での患者説明が容易に実現している。診療科の医師からは、Web配信画像は詳細な診断には耐えられるものではないが、患者説明時や同僚からの病状報告時には、電子カルテ上からストレスなく参照されるため、他の検査画像、検査結果と比較しながら閲覧できる点でも有用であると聞いている(図2)。

図3 カンファレンス室での運用風景
図3 カンファレンス室での運用風景

特徴としてKada-View 専用端末と同じ操作性が挙げられ、他のビューワの多くはDICOMビューワとWebビューワとでは異なるGUIであるが、このフォトロン社製Webビューワでは、同一GUIで構成しており、画面の操作性が全く同じである。これは混乱なく使用できることから評価は高い。Kada-View 端末では、あらかじめ端末に必要な動画を読み込んでおけば、即座に検査データを閲覧することができるため、検査後のカンファレンス室での大型スクリーンを用いた検討会にも利用されている(図3)。

図4 ファイル変換イメージ
図4 ファイル変換イメージ

全ての専用端末からはPACSサーバにもアクセス可能となっており、動画像と他のモダリティの静止画像を並べて診断できる。また、QCA/LVA解析も全端末で行うことができ(同時起動ライセンス数2)、診断・研究目的にも利用されている。
この他にも院外症例検討、研究発表用途として専用端末から汎用ファイルに変換する機能が標準で備えられており、動画ファイル「AVI」、「MPEG」、「WMV」形式に変換が可能であり、静止画ファイル「BMP」、「JPEG」、「TIFF」にも対応している。プライバシー保護の観点からも患者名を匿名化することができ、個人情報の漏えい防止にも役立っている。ただし、安全管理上の観点よりメディアへの書き出しはCD-Rのみとしている(図4)。

図5 IVUS長軸像生成イメージ
図5 IVUS長軸像生成イメージ

IVUS画像については、DICOMビューワ上で長軸像の生成を自動的に行う仕様となっており、狭窄部位の目視確認と距離計測、面積計測を行うことができ、検査後の患者への説明においても非常に有用な機能を備えている(図5)。
PACSシステムとの大きな違いは大容量の動画像データをいかにストレスなく動作させ、かつWeb参照についても他部門システムとのスムーズな連携が重要と考える。近年、循環器に限らず一般血管撮影の動画像データも容量が大きくなってきており、最大2048マトリックスまでの画像にも対応が必要であるが、今回導入した動画サーバは右記の2048マトリックスまで対応しており、全ての画像をWeb配信できるようWMV形式に自動変換することが可能である。また同一ハードウェアでの生成ができるため、ハードウェアの新たな購入も必要なく、非常にコストパフォーマンスも優れている。
今後は、透視検査画像での動画保存の需要も増えることが考えられ、動画サーバへの取り込みも検討している。

十二分に力を発揮する動画像ネットワーク

近年、HIS/PACS端末から各種の撮影画像を閲覧する用途が増えてきており、どの端末からでも画像を観察できる環境が求められる今日において、「Kada-View-Web」は高度な圧縮技術とストリーミング配信により、ネットワーク環境に左右されることなく、電子カルテに対応した動画像Web-Viewerであり、操作性・即時性・画像品質においても十二分に力を発揮してくれている。今後、他のモダリティが増えてきた場合においても、あらゆる状況に対応できる動画専用Web-Viewer であると確信している

瀬戸 光(せと・ひかる)
●72年金沢大医卒。同年同大医学部附属病院研修医(放射線科)。74年カナダ・マギル大医学部モントリオール総合病院放射線科レジデント。76年同大医学部附属病院助手(核医学科)。78年富山医科薬科大医学部講師(放射線医学)。80年助教授、96年教授。97年年中国蘇州医学院客員教授(核医学)。06年富山大大学院医学薬学研究部(医学)教授(放射線診断・治療学)。同大附属病院放射線部長。

富山大学付属病院 放射線部長 瀬戸光
富山大学付属病院 放射線部長 瀬戸光

新谷光夫(しんたに・みつお)
●75年金沢大医療技術短期大学部診療放射線技術学科卒。同年金沢医科大附属病院中央放射線部診療放射線技師。79年富山医科薬科大附属病院(現富山大附属病院)放射線部診療放射線技師、83年主任診療放射線技師、03年副診療放射線技師長、10年診療放射線技師長。

富山大学付属病院 診察放射線技師長 新谷光夫
富山大学付属病院 診察放射線技師長 新谷光夫

熊谷道朝(くまがい・みちとも)
●80年金沢大医療技術短期大学部診療放射線技術学科卒。同年富山医科薬科大附属病院(現富山大附属病院)放射線部診療放射線技師、89年主任診療放射線技師、10年副診療放射線技師長。

富山大学付属病院 副診療放射線技師長 熊谷道朝
富山大学付属病院 副診療放射線技師長 熊谷道朝

橋本将彦(はしもと・まさひこ)
●04年岐阜医療技術短期大診療放射線技術学科卒。同年富山医科薬科大附属病院(現富山大附属病院)放射線部診療放射線技師。

富山大学付属病院 診療放射線技師 橋本将彦
富山大学付属病院 診療放射線技師 橋本将彦

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