当院(図1)は、大阪府東部に位置する八尾市の中心部にあり、病床数は415床、診療科数20の総合病院である。2009年8月1日に、八尾市の北久宝寺より若草町の新病院に移転した。
新病院では、手術室の充実により八尾市はもとより、大阪市、中河内診療圏のすべて、奈良県北西部までをカバーして、住民の方々に大きく貢献している。
病院の屋台骨である内科系診療科は、若い内科のスタッフが最も忙しい総合内科を支え、その基盤の上に消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、糖尿病代謝内科が診療を行っているというのが内科の運営図式である。幸いスタッフが若くかつ誠実であり、日常診療の現場はもちろん、地上よりスロープでつながる2階の救急救命室(ER)でもしっかり<いのち>を支えている。
循環器内科では常勤医3名のスタッフで専門診療に当たっており、病棟は心臓血管外科と共用の44床で運営している。
年間の検査件数(09年度実績)は、カテーテル総検査数が961件、うちPCIは405件である。10年度は、10月時点で前年の症例数を上回っている。
新病院の開院に合わせて医療の安全を含む質の向上、診療の迅速化、効率化を進め、病院機能の充実を実現するため、既設の装置およびシステムの更新を行った。画像診療に欠かせないPACSの活用はもちろんのこと、循環器科領域で必要不可欠である動画ネットワークシステムは、フォトロン メディカル イメージング(株)(以下フォトロン)製の「Kada-Solution」を導入した。
導入に当たっては、装置とは別に動画ネットワークシステムを検討した。以前より動画ビューワとして使用していたDICOMビューワ「Kada-View」をそのままネットワーク環境でも使用したかったことと、何といっても価格が決め手となった。6社の選考から最安値であったため、納得の上フォトロンを採用した。フォトロンと比べて納入価格が3倍のベンダーもあった。「Kada-View」の良いところは、後にいくつか挙げるが、何といっても使いやすさである。Kadaインターフェースと称したフォトロン独自の画像処理コマンドインターフェースであり、検査画像の上に、9分割でよく使う画像処理コマンドが割り当てられており、それぞれのエリアにマウスカーソルを合わせることで、画像処理ができる。コマンド選択不要で、ストレスなく画面ズームやコマ送り再生、フィルタ値等の変更操作などができる点である。
導入システムの校正と運用(図2)
図2 八尾徳洲会総合病院 システム構成図
構成は、動画サーバシステム:Kada-Serve1式、動画ビューワ端末:7式(図3)、DICOM動画ビューワ:kada-View Ver.4 7ライセンス、心機能解析ソフト:Pie Medical社製CAAS5(QCA、LVA)フローティングタイプ1ライセンス。
接続しているモダリティおよびシステムは、東芝社製アンギオ装置、テルモ社製IVUS装置に東芝社製エコー装置8台。また、テクマトリックス社製PACS、ソフトウェアサービス社製電子カルテシステムとの動画Web連携を構築した。PACSとは、シームレスな連携ができており、PACSの検査リスト内に動画の検査画像リストも表示されているので一覧性があり、そこからスムーズに再生できる。
DICOM動画ビューワ 「Kada-View」の特長
前述のKadaインターフェース以外に特長を3つ挙げる。
まずは、画像呼び出しが速いこと。患者名、患者IDの入力による検査実施後に、瞬時に閲覧できる。カレンダー表を使用した検索方法は便利で、カレンダー上の日付をドラッグするだけでその期間の検査画像が呼び出せる。さらに、カテ日の曜日指定も可能である。
次に、IVUS装置でしか生成されなかった長軸像が、自動生成される。距離、面積計測機能も搭載していて、非常に重宝している。
3つ目は、豊富なファイル保存機能である。DICOM画像を様々なファイル形式に変換できる。静止画では、JPEG形式、TIFF形式等、動画では、MPEG形式、WMV形式と、学会で発表する資料作成に使用できて、とても便利である。
DICOM動画サーバ 「Kada-Serve」の特長
Kada-Serveは、モダリティよりDICOMデータを受信後すぐに、院内システムへの配信用ファイルとして、圧縮画像であるWMV形式のデータを作成する。WMV形式のファイルはDICOMデータの約6%までデータサイズを圧縮できるため、全ショットをストレスなく参照でき、診療の効率向上が図れている。1検査内に静止画、動画と混在した画像に対して、静止画のみをPACSへ転送する機能については、後に述べる用途で非常に業務効率向上につながっている。
システム導入前は、画像はすべてCDメディアで保存し、CDビューワで観察していた。今ではCDを作成する手間がなくなったこと、すぐに画像が閲覧できるようになったことはいうまでもない。導入前の画像も、直ぐに閲覧したいため、フォトロンに協力いただき、過去データ(CD)の1年分(約1000枚)を約10日間かけて動画サーバ(Kada-Serve)に移植できた。もちろん、1年以上前のCDを使用することもあるが、自分たちでも簡単に動画サーバ(Kada-Serve)へ送信、保存ができる。
循環器領域以外の部門でも動画サーバを有効活用
生理検査部門では、静止画のみテクマトリックス社製PACSを利用して閲覧していたが、以前より生理検査部門でも静止画だけでなく動画も見たいという要望があった。そのため動画ネットワークシステム導入時に全てのエコー装置を動画サーバに接続し、生理検査部門でも動画の検査画像が閲覧できるシステムを構築した。
動画が閲覧できることで、早期診断、治療方針の決定にも役立っている。画像送信する操作も容易である。静止画と動画をまとめてフォトロン動画サーバへ送るだけで、静止画はPACSへ自動転送される。PACSと動画サーバへ分けて送る手間と誤操作がないため、大変便利である。ここでもフォトロン動画サーバの機能(マルチゲートウェイ)が役立っている。
Webビューワの有効活用(図4)
導入時は、PACS(電子カルテ端末)上で圧縮画像を参照できておりとても重宝していたが、参照する際に用いるビューワのWindows Media Playerを使用してみていくつか改善してほしい点がでてきた。
まずは、今どの画像(シリーズ)を見ているかが分かりにくいので、画像ごとに検査情報を表示する機能の追加である。シネ画像では、1検査10数件の撮影画像(シリーズ)で構成されており、シリーズを切り替えて見るが、Windows Media Playerでは、検査、シリーズごとの画像情報は、全く表示されていなかった。
そこで、フォトロンとテクマトリックス社へ要望を挙げ、電子カルテベンダーのソフトウェアサービス社協力のもと、次のように改善された。
要望に応えて完成した待望の新Webビューワは、Kada-View Webである。製品名の通り、DICOMビューワであるKada-Viewと同一のインターフェース「Kadaインターフェース」の操作性と機能を踏襲していた。Kada-View Webでは、各シリーズのサムネイル画像に、撮影角度等の検査情報を表示できるため、見たい画像がすぐに選べるようになった。
さらに、以前はWindows Media Playerの再生機能に依存していたため、画像の再生と一時停止しかできなかったが、Kada-View Webでは、コマ送り再生もできるようになり、大変満足している。最近、カテーテル操作室に設置した大型液晶モニタを使用して患者、家族へ説明する際にも役に立っているツールである。
DICOM動画ビューワ同等の画像処理機能を搭載しているKada-View Webは、全ての電子カルテ端末で使用できるため、場所を選ばずにどこでも読影できて、とても便利である。
Webビューワについては、生理検査部門でもいくつか要望があった。通常エコー画像は、2心拍撮影しており、繰り返し再生して観察したいが、Windows Media Playerの再生では、1シリーズ再生が終了すると次のシリーズに切り替わってしまい、非常に困っていた。
また、同時に複数の画像を再生したいこともあり、1画像しか再生できない点についても不便を感じていた。Kada-View Webになってからは、繰り返し再生および複数の画像を同時再生することができるようになった。これらの改善要望が短期間で実現されたことは、フォトロン自社開発であることの強みのように思う。
循環器科領域で不可欠な動画ネットワーク有効活用のために
循環器科領域では検査から治療まで画像データが存在するため、動画ネットワークの存在は不可欠である。より動画ネットワークを有効活用するため、フォトロンにはまだまだ要望することがある。以前より熱望していた他の施設と連携を図るWebツールやMacintoshの対応等、今後も遠慮なく要望を挙げようと思う。
私が言うのもおこがましいが、高機能と使い勝手の良さを併せ持ち、日頃から小まめな要求にも受け応えてくれてユーザーニーズを満足させてくれるフォトロンの動画ネットワークシステムは、その施設でも有効に活用できるシステムとして、自信を持ってお薦めする。
迫田慎一郎(さこた・しんいちろう)
●66年大阪府生まれ。92年阪大医卒。札幌東徳洲会、松原徳洲会を経て、現在八尾徳洲会総合病院循環器内科部長として現在に至る。
八尾徳洲会総合病院 循環器内科 迫田慎一郎