はじめに
当院は神奈川県横浜市南区に所在する横浜市立大学附属の大学病院である。
明治4年に全国で2番目の洋式病院として設立した仮設の市民病院を出発点とし、横浜中病院、横浜共立病院、十全病院、横浜市立大学医学部附属浦舟病院などを経て、平成28年には創立145周年を迎えた。現在病床数は726床で大学病院として、先進的医療や他の病院では困難な高度な医療を提供するとともに地域密着型の病院であることを基本理念としている。
当院における構成
2015年3月に既存動画像ネットワークシステムのハードウェア劣化なども考慮し、動画像ネットワークシステムの更新を行った。
動画像ネットワークシステムを新たに構築するにあたり、既存システムメーカを含め様々な提案を受けたが、検討を重ねた結果、フォトロン M&E ソリューションズ社(以下フォトロン社)製動画像ネットワークシステム「Kada-Solution」を採用するに至った。
現在運用している動画像ネットワークシステムの構成は以下の通りである。
DICOM動画サーバ「Kada-Serve」(実効容量32TB)、専用端末を11台用意し、端末には、DICOMビューワ「Kada-View」とレポートシステム「Kada-Report」がインストールされている(11台のうちレポート記入は8台)。
専用端末からは画像の参照、レポートの記入以外に、心機能解析ソフト「CAAS5」LVA、QCA、QVAがフローティングにて2ライセンス用意されている。
その他、ハイブリッド用アンギオに接続している透視像録画/配信システム「Kada-Rec」が1台導入されており、最近ではTAVIの術前シミュレーションソフト「3mensio Structural Heart」も導入している。
接続しているモダリティはアンギオ装置が4台(東芝メディカルシステムズ社製アンギオ装置×3台、シーメンスヘルスケア社製アンギオ装置×1台)、透視装置が2台(東芝メディカルシステムズ社製アンギオ装置×1台、シーメンスヘルスケア社製アンギオ装置×1台)、ポリグラフ装置が4台(日本光電社製)、IVUS装置が5台(ボストン・サイエンティフィック ジャパン社製×2台、テルモ社製×2台、ボルケーノ・ジャパン社製×1台)、OCT/ OFDIが3台(テルモ社製×1台、セント・ジュード・メディカル社製×2台)と接続している。 院内システムとの接続はNEC社製電子カルテシステム、富士フイルムメディカル社製PACSと接続を実施している。
また、他ベンダーシステムからの更新のため、既存サーバに保存していた動画像およびレポートデータに関しては移行作業を実施し、完了している。
院内システムとのオーダー及びWeb連携について
先ほど院内システムとの接続はNEC社製電子カルテシステム、富士フイルムメディカル社製PACSと実施していると記載したが、具体的な当院の連携について記載する(図1)。
図1 横浜市立大学附属市民総合医療センター動画ネットワークシステム構成図
まず連携の1つ目としては、電子カルテからのオーダー連携があげられる。
今日の医療現場では様々なシステムが導入され非常に便利になってきている反面、それぞれのシステムが独立して稼働しているため、必要としている情報が院内システムに保存されていることは把握しているが、部門システムに反映できず、画面を見ながらの再度の手入力が必要な場合がある。
当院では電子カルテシステムから動画像ネットワークシステムのレポートシステムへ心臓カテーテル検査のオーダー連携をすることとした。循環器レポートにおいては患者情報の取得だけでは足りず、検査内容や禁忌情報など必要とする情報は膨大にある。現在、患者情報以外に感染症情報や禁忌情報、検査日や検査内容を含めたオーダー情報を取得しており、Kada-Reportの予定表へ反映をしている。さらに、予定表からレポート作成時に「Cr」、「eGFR」、「入院までの経緯」といった情報を電子カルテから取得して反映している。
連携の2つ目はWeb連携である。
今日の部門システムは専用端末でのみ参照できるシステムに留まらず、院内システム(電子カルテなど)から参照できる仕組みを構築することが必須要件とされている。
当院でも動画像サーバに保存された画像、レポートシステムに入力したデータについては院内の電子カルテ端末からWeb画像の参照やPDFレポートの参照を行えるようになっている。
参照できる入口は電子カルテとPACSそれぞれに用意している。
PACSからは富士フイルムメディカル社製の検査画像統合システムであるSYNAPSE SCOPEから連携することで、静止画と動画を簡単に閲覧できる仕組みとなっている。
フォトロン社の動画サーバは装置から画像を受信するとDICOM画像を自動的にWMVファイルへ変換し、サーバ内へDICOM画像と共に保存される仕組みとなっているため、モダリティから発生した画像はすぐに院内システムから参照可能となっている。
専用端末はDICOM画像での参照が必要だが、院内端末での参照は院内ネットワークへの負荷を考慮する必要がある。
フォトロン社のWeb配信用画像の容量は、最大でDICOM動画ファイルの6%ほどに圧縮される。通常の心臓カテーテル検査1件で発生するDICOMファイルの容量は200~400MBであるが、それを12~24MB程度まで小さくすることで院内ネットワークへの負担は軽減され、専用のネットワーク回線を使用せずにストレスのない動画参照を可能としている。
このWeb配信用動画ビューワは専用端末のDICOMビューワと同様の操作性、機能性を有しているため、ビューワの違いを意識することなく画像の参照、操作をすることが可能である。
また、Kada-ServeはDICOM画像の保存だけではなく、レポート、Web、透視像の保存を同一筐体にて実現しており、導入費用、保守費用を必要最低限に抑えることが可能な非常にコストパフォーマンスの高いサーバシステムであると言える。
動画サーバの運用や特徴
1. DICOM動画ビューワ「Kada-View」
Kada-Viewは院内での動画参照が主な使用目的だが、画像を簡単にJPEGやMPEGなどの動画・静止画の汎用ファイル形式にて出力することが可能であり、学会などのプレゼンテーション用のデータ作成にも非常に有用である。患者情報保護の観点から匿名化しての出力設定が可能なことは勿論、動画の尺の編集や図形、アノテーション情報を付随させた状態での出力も可能となっている。
2. 循環器用レポート/放射線被ばく管理レポート「Kada-Report」
当院ではもともと導入していた動画サーバがFileMakerをベースとしたレポートシステムであったが、フォトロン社のレポートシステムもFileMakerをベースとしたシステムとなっている。
当院の循環器レポートシステムは先ほど述べたように電子カルテからオーダー連携を実施しており、カレンダー機能の予定表からレポートの作成が始まる。
現在用意しているレイアウトとしては基本情報、CAG、右心カテ、PCI、IVUS/QCA、AoG、EVT、PMI、EPS/ABL、CAS、腹部IVR、チェックシート(各ショット毎の撮影角度、透視や撮影の線量情報を表示)がある。また、現在作成中だがTAVIレポートも今後作成予定である。
また、Kada-Reportのオプション機能である放射線被ばく管理レポートも導入している。装置から出力される情報から線量情報、撮影角度情報をデータ収集することが可能で、表形式による撮影情報および線量情報の一覧表示や最良の撮影角度にマークをつけ、次検査で参照し活用する仕組みを構築している。
3. 透視像録画/配信装置「Kada-Rec」
透視像録画/配信装置Kada-Recをハイブリット室のアンギオ装置と接続するために1台導入している。Kada-Recは透視画像をWMVファイルとして保存可能なシステムである。録画の仕組みはシンプルで、血管撮影装置のモニターへ出力される信号を直接収録するものである。
従来、透視画像を録画する場合、民生品のDVDレコーダーを利用し、DVDまたはハードディスクへ保存することが通例となっている。その場合、治療後に録画画像を確認しようとしても再生したい部分を探し出すことが難しく、時間を要し、編集も行えないことから記録としての意味合いが強くあった。
しかし、Kada-RecではX線曝射のオン、オフの際にマークを付けられるため、必要部分の検索、頭出しが容易であるとともに、WMVファイルで保存しているため学会などへの二次利用も簡便にした。
Kada-Serveへの保存も行っており、データの長期保存へも適したシステムとして有用性を発揮している。
4. TAVI術前シミュレーションソフト「3mensio Structural Heart」の有用性
最後に、動画サーバのシステムではないが、当院で最近導入したTAVIの術前シミュレーションが行える「3mensio Structural Heart」について述べたいと思う。
3msnsio Structural Heartは当院も導入している心機能解析ソフト「CAAS」を開発しているオランダのPie Medical Imaging社が開発元であり、フォトロン社が販売・サポートを行っている。
当院では2016年からTAVIを実施しており、当初は術前シミュレーションについてはもともと当院で稼働していた3D Workstationで解析業務を行っていたが、操作が煩雑だったこともあり、TAVIの術前シミュレーションで高い評価を受けていた3mensio Structural Heartを導入をした。
ソフトウェアはハイブリット操作室、血管造影操作室、カンファレンスルーム、CCU、医局に設置してあるフォトロン社の専用端末にフローティングとして1ライセンス導入した。
3mensio Structural HeartはTAVI術前シミュレーションに特化したソフトであり、直観的なグラフィックインターフェースにより、迅速かつ簡便に大動脈弁やアクセスルートを視覚化し分析することができるため、解析、計測の時間を大幅に短縮、ワークフローの効率化を可能にした。
今後の動画サーバに期待すること
今回当院で導入した動画ネットワークシステムについて記述したが、更新を行うたびに新しい連携やシステムの導入があり、システムの進化や発展が著しく、医療現場の環境や要望も日々変化していると実感した。今後も様々な要望が出てくるかと思うが、メーカにはより迅速かつ柔軟に対応し、益々のシステムの進化を期待している。
日比 潔
横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター